
「なんとなく体が重い」「感情が不安定」「よく眠れない」――。
40代後半から50代にかけて、そんな心と体の不調に悩む女性は少なくありません。
それは、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少によって起こる更年期障害かもしれません。
更年期の症状は、ほてりや動悸、冷え、不眠、イライラなどさまざまで、個人差も大きいのが特徴です。
「私は私」と受け止めながら、無理をしすぎずに整える工夫がとても大切になります。
今回は、更年期におすすめの食材と、体質に合わせてやさしくサポートしてくれる漢方の取り入れ方をご紹介します。
目次
更年期の不調をやわらげる鍵は「内側から整えること」
更年期は、女性の体と心に大きな変化が訪れる時期です。ホルモンバランスが崩れることで、理由のわからない不調や気分の波を感じやすくなり、日常生活のちょっとした出来事にも影響を受けることがあります。
これらの変化は、見た目にはわかりにくく、まわりから理解されにくいという孤独感をともなうこともあるため、より丁寧に自分の体と向き合う時間が必要になります。
そんな中で大切なのは、「身体の内側から整える」という視点です。
薬やサプリメントに頼るのも選択肢のひとつですが、まずは「日々の食事」や「体に負担をかけない自然な手当て」から始めることが、無理なく続けられるセルフケアになります。
無理にがんばるのではなく、自分の状態を受け入れて整えていく――。
そうした前向きなセルフケアは、ホルモンや自律神経のリズムをゆるやかに支え、結果的に心身の安定へとつながっていきます。
では実際に、どのような食材を選び、どんな習慣を取り入れていけばよいのでしょうか。
ここからは、更年期のケアに役立つおすすめの食材をご紹介します。
食事で身体と心を整える、更年期におすすめの食材6選
大豆製品(イソフラボン)
豆腐・納豆・豆乳・味噌 など
大豆イソフラボンは、女性ホルモン「エストロゲン」と似た働きを持ち、ホルモンの減少による不調をやわらげてくれる注目成分です。
味噌汁や納豆など、毎日の食卓に手軽に取り入れられます。
緑黄色野菜(ビタミン・抗酸化成分)
ブロッコリー、小松菜、にんじん、かぼちゃ など
抗酸化作用のあるビタミンC・Eやβカロテンが、細胞の酸化ストレスを軽減。
自律神経や血流のバランスを整える助けになります。
乳製品・小魚(カルシウム)
ヨーグルト、チーズ、しらす、ひじき など
骨密度の低下を防ぐカルシウムは、更年期に欠かせない栄養素です。
神経の興奮を抑える効果もあるため、イライラや不安の緩和にも役立ちます。
良質なたんぱく質(ホルモンの材料)
鶏肉、鮭、卵、大豆製品
ホルモンや神経伝達物質の原料になるたんぱく質は、体の土台作りに不可欠。
特に魚に含まれるEPA・DHAは、気分の安定にも好影響を与えるとされています。
発酵食品(腸内環境を整える)
ヨーグルト、味噌、ぬか漬け、キムチ、甘酒 など
腸内環境の改善は、自律神経のバランスや免疫力の向上にもつながります。
「腸は第二の脳」とも言われており、心の不安定さにも影響します。
ちなみに、インドネシアでは大豆の発酵食品「テンペ」が、更年期のセルフケアにぴったりの食材として知られています。
発酵によって大豆イソフラボンが吸収されやすくなっており、ホルモンバランスの乱れをやさしくサポートしてくれます。
さらに、腸内環境を整える効果や良質なたんぱく質も豊富で、納豆が苦手な方にも食べやすいのが魅力です。
毎日の食卓に取り入れて、海外の知恵も味方にしながら、からだを内側から整えていきましょう。
ナッツ類・種子類(ビタミンE・ミネラル)
アーモンド、くるみ、ごま など
血行を促進し、冷えや肩こり、頭痛などをやわらげる働きが期待できます。
抗酸化作用の高いビタミンEも豊富で、若々しさの維持にも役立ちます。
漢方という選択 体質に合わせた“やさしい処方”を軽減するための具体的なポイント
更年期にあらわれる不調は、単なる体の変化だけではありません。
「なんとなく体が重い」「やる気が出ない」「人に説明しづらいけれど、毎日がしんどい」――そんな“はっきりしないつらさ”に悩まされることが多いのが更年期の特徴です。
こうした不調に対して、「検査では異常なし」と言われてしまうと、ますます戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そんな時こそ、選択肢のひとつとして注目したいのが、自然の力を活かした漢方薬です。
漢方は、単に症状を抑えるのではなく、「体質を整える」という視点でアプローチしてくれます。
「冷えやすい」「疲れが抜けにくい」「気分が落ち込みやすい」「イライラしやすい」など、人によって異なる不調のパターンに寄り添い、それぞれの体質に合った処方を選ぶことができます。
また、漢方は比較的作用が穏やかで、継続的に取り入れることで体質そのものをゆるやかに整えていくため、体にやさしく自然なかたちで変化を促してくれるのが大きな魅力です。
「病気とまでは言えないけれど、毎日なんだかつらい」
そんな時にこそ、漢方という選択が、あなたの体と心に静かな力を貸してくれるかもしれません。
代表的な更年期向け漢方例
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
⇒ イライラ・不眠・のぼせ・情緒不安定など“気の乱れ”に。 - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
⇒ 冷えのぼせ・肩こり・頭痛など、血の巡りが悪いタイプに。 - 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
⇒ 冷え性・むくみ・疲れやすい・月経不順など“血虚”タイプに。

これらはすべてドラッグストアや婦人科で相談可能で、市販薬や処方薬として入手できます。
「どれが合うかわからない」という方は、漢方に詳しい薬剤師や医師に相談してみましょう。
みすずレディースクリニックでも、自然のチカラを活かした漢方薬の処方・アドバイスを行っております。ぜひ気軽にご相談ください。
「甘やかす」ことも大切なケア
更年期は、「がんばりすぎないこと」が何よりも大切です。
不調を感じた日は、無理に動かず、ゆっくり休むこと。
好きな香りのお風呂に入る、甘酒でほっと一息つく、やさしい音楽に身をゆだねる……。
そんな“甘やかしタイム”こそ、あなたの心と体を癒す最高の処方です。
こうした時間も、自分をいたわり整えるための大切なセルフケア。がんばりすぎない優しい時間を、どうか遠慮なく持ってください。
今日から始める、心と身体にやさしい更年期ケア
更年期のつらさは、毎日の小さな選択で少しずつ和らげることができます。
食事で整え、漢方で体質にアプローチし、自分を責めず、やさしく受け止める。
そんなケアの積み重ねが、明日のあなたをもっとラクにしてくれるはずです。
「今日からできること」を、ひとつずつ。
身体と心にやさしい暮らしを、あなたのペースで始めてみてください。