汗を拭く40代の女性

更年期障害とは、主に40代後半から50代にかけて、多くの女性が経験する身体や心の不調のことをいいます。この時期、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が急激に減少するため、体内のバランスが崩れやすくなり、さまざまな症状が現れるのです。すべての人に同じような症状が出るわけではなく、症状の出方や程度には個人差があります。このページでは、更年期障害の原因や症状、そして自分でできる対処法まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。

※更年期障害の外来のご紹介、チェックシートなど⇒更年期外来について

更年期障害の原因

エストロゲン減少の影響

エストロゲンは生殖機能だけでなく、女性の体を守る働きを持つ大切なホルモンです。肌や髪の潤いを保ったり、骨を丈夫にしたり、自律神経や感情の安定にも深く関わっています。更年期に入ると、卵巣の働きが弱まり、エストロゲンの分泌量が急激に減ってしまいます。このホルモンの変化が、身体や心のさまざまな不調を引き起こす主な原因です。

自律神経の乱れとの関連性

エストロゲンは、自律神経のバランスを整える働きも担っています。自律神経は、体温調節・心拍・呼吸・消化・睡眠など、私たちが意識しなくても体の調子を整える大切な役割を果たしています。そのため、エストロゲンが減少すると自律神経が乱れ、のぼせや動悸、不眠などの症状が起こりやすくなるのです。

加齢による身体的変化

年齢を重ねることで、筋肉や骨の量が減り、代謝も低下していきます。これによって、疲れやすくなったり、体が重く感じるようになったりします。また、体の冷えやだるさなど、今まで感じなかった不調を自覚することもあります。

心理的・社会的要因

更年期の時期は、人生の中でも多くの変化が起こるタイミングです。たとえば、子育ての終わりや親の介護、仕事の責任が増すなど、精神的な負担が重なりやすい時期でもあります。こうしたストレスが、身体的な症状をさらに強める原因にもなります。

更年期障害の主な症状

身体的症状

ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり)
突然顔が熱くなったり、汗が出たりします。夜中に汗をかいて目が覚めることもあります。
動悸・息切れ
階段を上ったときや少し動いただけでも、心臓がドキドキしたり、息が苦しく感じたりします。
むくみ・肩こり・腰痛
体内の水分バランスが崩れたり、筋肉が緊張しやすくなったりして、体が重く感じます。
頭痛・めまい・しびれ
脳や神経に関係する症状で、自律神経の乱れが関係しています。日常生活に支障をきたすこともあります。

精神的症状

  • イライラ・不安・うつ症状:些細なことで怒りっぽくなったり、突然涙が出たりすることもあります。自分ではコントロールが難しい場合もあります。
  • 睡眠障害:夜なかなか寝つけなかったり、途中で何度も目が覚めたりすることで、十分な休息が取れず、日中の疲れが取れません。

消化器系の症状

食欲がなくなったり、反対に食べ過ぎてしまったりすることがあります。また、胃もたれや便秘・下痢など、お腹の調子が不安定になることや、「喉にものが詰まったような不快感」を訴えられる方もおられます。です。

更年期障害の診断方法

更年期障害かどうかを正確に判断するには、自己判断だけでは不十分です。婦人科や更年期外来を受診することで、ホルモンの値を調べる血液検査や、問診による症状の確認が行われます。正しい診断を受けることで、症状に応じた適切な治療を受けられるため、少しでも不調を感じたら早めに相談することが大切です。

更年期障害の対処法

生活習慣の改善

食事
大豆製品に含まれる「イソフラボン」は、エストロゲンに似た働きをするため、積極的に取り入れましょう。また、ビタミンB群や鉄分、カルシウムなどの栄養素も大切です。
運動
軽いウォーキングやストレッチ、ヨガなどの適度な運動は、気分を安定させ、体力を維持するのに効果的です。
睡眠と休養
規則正しい生活を心がけ、できるだけ決まった時間に寝起きするようにしましょう。昼寝などで小まめに体を休めるのも◎。
ストレス管理
趣味を楽しんだり、人と話したりすることが、心の安定につながります。無理に頑張らず、自分のペースを大切にしましょう。

更年期障害に効果てきめんのピラティス、スタジオメノティス

ホルモン補充療法(HRT)

足りなくなったエストロゲンを薬で補う治療法です。効果は高く、多くの人が症状の改善を感じていますが、副作用やリスク(乳がんなど)もあるため、医師とよく相談して判断することが必要です。

漢方薬やサプリメント

体質や症状に合った漢方薬は、西洋薬よりも体に優しく作用します。また、最近では「エクオール」という成分を含んだサプリメントも注目されています。自分に合ったものを選びましょう。

心理的サポート

精神的な不調が強い場合は、臨床心理士やカウンセラーとの対話が有効です。また、同じような悩みを抱える人と話すことで安心できることもあります。地域のサポート団体やオンラインのコミュニティも活用できます。

更年期障害と上手に付き合うために

更年期は、誰にでも訪れる人生の一段階であり、決して特別なことではありません。症状があっても、自分を責める必要はありません。大切なのは「無理をしないこと」と「一人で抱え込まないこと」です。家族や職場の理解、医師や専門家のサポートを得ながら、少しずつ自分に合った方法を見つけていきましょう。

まとめ

更年期障害は、体の変化だけでなく、心にも影響を与えるデリケートな問題です。しかし、正しい知識を持ち、自分の体を大切にしながら適切な対処をすることで、快適な生活を取り戻すことができます。
当院に受診された方で、個別のカウンセリングをご希望される場合は、医師にお申し出ください。
これからの人生をより健やかに、前向きに過ごすために、まずは自分自身をよく知ることから始めてみましょう。